目次
RFPって何?簡単に説明すると
RFP(Request For Proposal)は「提案依頼書」と呼ばれる文書です。システム開発やサービス導入などを外部の会社(ベンダー)に依頼する際に、「こんなことをやってほしい」という内容をまとめた公式な文書になります。お寺のDXを始めるにあたって、システムの開発が必要になってくることがあります。システム会社に、「こういうことをやりたいので見積もりを作成して下さい」とお願いするシーンもでてくるでしょう。その際に必要となるのが、RFPなのです。
例えるなら、家を建てる時の「設計依頼書」のようなものです。間取りや予算、完成希望日など、家に求める条件を書いて複数の工務店に渡し、それぞれの提案を比較検討するためのものと考えると分かりやすいでしょう。
なぜRFPが必要なの?
「電話やメールで依頼すれば良いのでは?」と思われるかもしれませんが、RFPには大切な役割があります。
自分たちの要望を整理できる
RFPを作成する過程で、「本当に必要な機能は何か」「いつまでに完成させたいのか」「予算はいくらまでか」などを社内で話し合い、整理することができます。これにより、あいまいだった要望が明確になります。
公平に比較できる
一定の金額以上になると、相見積もりをすることが必須になることは多いでしょう。同じ条件を複数のベンダーに提示することで、提案内容を公平に比較することができます。A社には詳しく説明したけどB社には説明不足だった、というムラがなくなります。
後々のトラブルを防げる
「言った・言わない」のトラブルを防ぐことができます。RFPに書いておけば、「そんな機能は頼んでいない」「もっと早く完成すると思っていた」といった認識の食い違いを減らせます。
RFPと似た文書の違い
RFPに似た文書がいくつかありますが、使う場面が少し異なります。
RFI(情報提供依頼書)
市場調査や情報収集が目的の文書です。「どんな会社がどんなサービスを提供しているのか知りたい」という段階で使います。RFPの前に行うことが多いです。
RFQ(見積依頼書)
すでに何を作るかがはっきりしていて、「いくらでできるか」だけを聞きたい時に使います。例えば、特定のサーバー機器を10台購入する際の価格を各社に問い合わせる場合などです。
RFPに書くべき基本的な内容
初めてRFPを作る場合、何を書けばよいか悩むかもしれません。最低限、以下の内容を含めるとよいでしょう。
1. プロジェクトの概要
なぜこのプロジェクトを始めるのか、何を達成したいのかを簡潔に説明します。「現在の課題」と「それを解決して実現したいこと」を明記するとベンダーの理解が深まります。
例:「顧客管理システムが古くなり、データ入力に時間がかかっています。新しいシステムでは入力時間を半減させ、スマートフォンからも閲覧できるようにしたいです。」
2. 必要な機能・要件
システムやサービスに求める機能や条件を具体的に書きます。特に重要な要件は「必須」と明記しておくとよいでしょう。あまり細かく指定しすぎると、ベンダーの創意工夫の余地がなくなるので注意が必要です。
例:
- 顧客データを一括登録できること(必須)
- スマートフォンでも閲覧できること(必須)
- 顧客の購買履歴がグラフで表示されること(希望)
3. スケジュール
プロジェクト全体の期間、重要な節目、完成希望日などを記載します。無理のないスケジュールを設定することが大切です。
例:
- RFP配布:4月1日
- 質問受付:4月1日~4月10日
- 提案書提出期限:4月20日
- ベンダー選定:5月10日
- プロジェクト開始:5月20日
- システム完成目標:10月末
4. 予算の目安
予算について書くかどうかは意見が分かれますが、書いておくと現実的な提案が集まりやすくなります。「予算は約○○円を想定していますが、それ以上の価値ある提案があれば検討します」といった表現が適切です。
5. 提案書の提出方法
提出期限、提出先、提出形式(電子メール、紙、両方など)を明記します。また、提案書に含めてほしい内容(会社概要、実績、担当者のスキルなど)も指定するとよいでしょう。
6. 選定基準
どのような基準で提案を評価するのかを示します。「価格だけでなく、機能性、使いやすさ、保守サポート体制なども総合的に評価します」といった記載が一般的です。
7. 問い合わせ先
RFPについて質問がある場合の連絡先を記載します。質問と回答は、公平を期すためにすべてのベンダーに共有することが望ましいです。
RFP作成のコツ
初めてRFPを作成する際に役立つポイントをいくつか紹介します。
シンプルで分かりやすく書く
専門用語や難しい言葉は避け、誰が読んでも理解できる文書を心がけましょう。長すぎるRFPは読まれない可能性があるので、要点をまとめることも大切です。
「なぜそれが必要か」の理由も書く
単に「この機能が必要」と書くだけでなく、「なぜその機能が必要なのか」という背景も書くと、ベンダーは本質的な課題を理解し、より良い提案ができます。
例:「スマートフォン対応が必要(営業担当が客先でもデータを確認できるようにするため)」
現実的な要求にする
「完璧な機能」「超短期間」「格安価格」の3つを同時に満たすことは難しいです。優先順位をつけて、現実的な要求を心がけましょう。
社内の関係者と一緒に作る
IT部門だけでなく、実際にシステムを使う部門の意見も取り入れて作成しましょう。様々な視点からの要件を集めることで、より実用的なシステムができます。
提案書の評価方法
RFPに対する提案書が集まったら、以下のステップで評価します。
評価チームを作る
IT部門と実際の利用部門から数名ずつ選び、評価チームを作ります。多様な視点から評価することが大切です。
評価シートを準備する
「機能の充実度」「使いやすさ」「価格」「サポート体制」など、評価項目とその重要度を決めた評価シートを作ります。例えば5段階評価で各項目を採点し、合計点で比較する方法が一般的です。
プレゼンテーションを実施する
書類だけでなく、ベンダーによるプレゼンテーションも実施すると理解が深まります。この場で具体的な質問をすることで、ベンダーの対応力や理解度も評価できます。
総合的に判断する
最終的には価格だけでなく、機能性、使いやすさ、ベンダーの信頼性、サポート体制など、総合的に判断して選定します。最安値のベンダーが必ずしも最適とは限りません。
よくある失敗とその対策
RFPプロセスでよくある失敗例と、その対策を紹介します。
要件があいまい
「使いやすいシステム」といったあいまいな表現では、ベンダーは何を提案すればよいか分かりません。
対策: 具体的に「初心者が30分以内に操作方法を覚えられるシステム」のように、できるだけ具体的に書きましょう。
非現実的な要求
予算や期間に見合わない高度な機能を求めると、実現できない提案や予算オーバーの提案しか集まりません。
対策: 事前にベンダーへの相談や市場調査を行い、現実的な要求を設定しましょう。
評価基準が不明確
「なんとなく良さそう」という主観的な判断では、後々説明が難しくなります。
対策: 明確な評価基準を設け、点数化して比較することで、客観的な評価ができます。
小規模プロジェクトのRFP例
小規模なプロジェクトでは、数ページのシンプルなRFPでも十分です。例えば、以下のような構成が考えられます。
会社ウェブサイトリニューアルのRFP例
1. プロジェクト概要
- 当社のウェブサイトを5年ぶりにリニューアルしたい
- 現状の課題:スマートフォン対応していない、更新が難しい、デザインが古い
- 目標:スマートフォン対応、社内で簡単に更新できる、現代的なデザイン
2. 必要な機能・要件
- レスポンシブデザイン(PCとスマホに対応)
- CMS(コンテンツ管理システム)導入で社内更新可能に
- 企業情報、製品情報、お知らせ、採用情報のページ構成
- お問い合わせフォームの設置
- SNSとの連携
3. スケジュール
- 提案書提出:○月○日まで
- ベンダー決定:○月○日
- リニューアルサイト公開:○月○日目標
4. 予算
- 約100万円(保守費用別)
5. 提出物・選定方法
- 提案書(A4で5ページ程度)
- 概算見積書
- 類似サイト制作実績
- メールで提出:△△△@example.com
6. 問い合わせ先
- 担当:山田太郎(総務部)
- 電話:03-xxxx-xxxx
- メール:△△△@example.com
まとめ
RFPは外部ベンダーに仕事を依頼する際の重要な文書です。最初は作成に手間がかかりますが、要件を整理し、適切なベンダーを選ぶための重要なステップと考えてください。
小規模なプロジェクトであれば、必要最低限の項目だけを含んだシンプルなRFPから始めてみましょう。経験を積みながら、より良いRFPが作れるようになっていきます。
最も大切なのは、「何を実現したいのか」という目的をしっかり伝えることです。細かい実現方法よりも、達成したい目標を明確に伝えることで、ベンダーのノウハウや創意工夫を活かした良い提案が集まりやすくなります。

京都大学農学部卒業後、株式会社リクルート勤務を経て、ギガフロップス株式会社を創業。同社売却の後、游仁堂の創業、株式会社鎌倉新書の取締役などを歴任。366創業時から事業に参画。2021年より取締役。行政書士、宅建士の顔も併せ持つ。
コメント